「チンチャー女の陰謀」

  第三場 ーーーバラモンの家、明るくなるとバラモン二人、酒を飲んでいる。
バラモンA 「おい聞いたかい。ゴータマと鹿頭との術比べ」
バラモンB 「そりゃもう、兄さん。くそ面白くもない。町じゅうそのうわさでもちきりですよ」
バラモンA 「じっさい、世間という奴は、現金なものだなあ。あの一件以来、我々バラモンの権威は地に落ちたも同然。お参りがすっかり減ってしまって、青息吐息じゃないか」
バラモンB 「それに引き換え、ゴータマの一党は大変な羽振りですよ。信者の王侯長者が競って人々に食事の供養をするものだから、評判は上がる一方、片や我々は灯明の油にもこと欠く始末。えらいご時世になったもんだ」
バラモンA 「鹿頭の馬鹿者め、あれほど大口を叩いておったのに、ゴータマの奴めにまんまと丸め込まれてしまいおって、情けない」
バラモンB 「その鹿頭にさきほど逢いましたよ。頭を剃って、すっかり青坊主になっちゃって、神妙な顔をして托鉢をしてましたよ。思わず奴の足跡に唾を吐きかけてやりました」
バラモンA 「なんてこった。まったくバラモンの恥さらしだ。ゴータマはだいいちクシャトリアの出じゃないか。悟りを開いたとかなんとか言っているが、ベーダの神々を供養しないとはなんという罰当たりだ。いまに二人ともインドラ神の稲妻に撃たれて焼け死ぬがいいんだ(興奮して、息を切らす)」
バラモンB 「まあ、まあ、兄さん、抑えて抑えて。(背をさする)」
ーーー下手からチンチャー女、登場

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