「インド(セキュラー)政府に対する

ブッダガヤ大菩提寺全面返還を求める覚書」

2004年11月3日

インド下院議会ソムナート・チャタジー議長閣下

 

ブッダガヤの大菩提会は仏教徒にとって最も神聖な地であるとともに、仏陀が覚醒された地として特別な意味をもっています。何世紀にもわたり仏教徒は大菩提寺を訪れ、人類の最も偉大な教師への畏敬と感謝の念を捧げてきました。しかしながら悲しいことにこの聖地は仏教徒の手によって守られてはきませんでした。同寺院はアショカ大王によって建立され、その後数他の仏教寺院が作られてきました。同寺院が仏教徒の貴重な遺産として維持されていないことは全世界の仏教徒にとって痛恨の極みであります。世界中の宗教的聖地はそれぞれの宗教社会が保持し管理しております。イスラエルのメディナ、メッカ、キリスト教のエルサレム、シク教のゴールデンテンプルすべて然りです。しかるに大菩提寺のみが仏教を敵視し、聖地を破壊、冒涜し、仏教徒を巧妙に遠ざけてきた者たちの手に握られてきました。この状況は誠に憂慮すべきであり、今こそ聖地を仏教徒の手に委ねるべきであります。世紀を越えインド仏教徒、中でもナグプールの仏教徒は決死の返還運動を推進してきましたが、要求は実現されませんでした。

 ヒンズー指導者たちは、今もって大菩提寺と仏教徒の聖地として認めようとはしません。このような態度は世界の仏教徒に対する侮辱以外の何ものでもありません。「アジアの光り」の著者として有名なエドウィン・アーノルド卿はこのような仏教聖地がブラーミンの手にあるのは不可解だと同書の中で述べています。

 オーソドックスヒンズーの狂信的グループはヒンズー教徒の盲目的宗教感情を利用し人々を巧みに操ってきました。問題は感情論ではなく、宗教的場所はその宗教を奉ずる人々の手によって保存されその手に委ねられるべきであり、その宗教に敵意と憎しみを抱く者の手に委ねてはならないということであります。それ故大菩提寺は歴史的事実においても正当な継承者である仏教徒に委ねるべきなのは誰の目にも明らかであります。それによって世界の仏教徒も安心して彼らの聖地を巡拝できるでありましょう。

 一部狂信的ヒンズー原理主義者たちが大菩提寺の破壊を公言しており、仏教徒はその危険を深刻に危惧しております。1992年に発生し2千人もの死者を出したウッタル・プラデシュ州アヨッジャにおけるイスラムのバーブリ・マスジッド寺院の大破壊は仏教徒の危惧が決して単なる憶測でないことを裏書しております。

世界の仏教徒の祈りをこめ、大菩提寺解放運動の指導者としてアーリヤ・ナーガルジュナ 佐々井秀嶺は慎んでこのアピールを閣下に提出致します。

セキュラリズムを標榜するインド政府、並びにマンモハン・シン首相が一日も早く決定を下されることを願って止みません。

1949年に施行された大菩提寺管理法はヒンズー教徒の同寺管理を維持させる為に企らまれたものであり、我々仏教徒の完全管理実現にとって最大の障害となっております。 それ故、同法の廃止と1991年ビハール州ラルー・プラサド・ヤダヴ州首相が提案されたような新しい法案を作成して頂くように切に懇願致します。

仏教国でもある日本の人々も私共の始めた大菩提寺の返還運動の正当性を理解しその成功を支援して下さっています。 また世界仏教国の人々にとっても大きな関心事であるこの問題解決に対し閣下の深いご配慮を賜りますよう心よりお願い致します。 現在大菩提寺はユネスコ本部の管理下にあり、同寺が仏教遺跡として2002年世界遺産として登録されたことを仏教徒は心から喜んでおります。

 

インド政府マイノリティー委員会委員アーリヤ・ナーガールジュナ

佐々井秀嶺 署名