インドネシア、バリ島の仏教寺院にて
 七日の後ブッダはムチャリンダ竜王の住む樹の下に至って、坐られたが、時ならぬ雲が現れ、七日の間雨がつづいた。風は冷たく天地は黒闇に覆われた。竜王は住居を出で、身をもって仏陀を守護した。七日を過ぎると雨は霽れ、風も凪んだ。空には一片の雲もない。竜王は童子となって再び仏陀の前にたち、掌を合わせて拝した。仏陀はしずかにいわれた。
 教えを聞き、真の理を見て、心満ち足りたる者は安らかなり。世の生きとし生ける者に怒りを抱かず、自己を抑え得る者は安らかなり。貪りを離れ、官能の欲を遠ざかる者は、安らかなり。しかれども、我ありという、己の心に打ち克つ者は、この上もなく安らかなり
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