「臨済宗・黄檗宗連合各派合議所アピール」

 

 全世界の仏教徒の根本一大聖地はいうまでもなく、貴国ビハール州、ブッダガヤの大菩提寺であり、
金剛宝座と聖菩提樹に象徴されます大塔とその一帯こそ、世界仏教徒の信仰の拠り所となる聖なる場所であります。

 ことに私ども臨済の流れを汲むものにとりましては、とりわけ仏心宗と標榜するように、
釈尊よりマハー・カーシャパ尊者に付属され、ボディー・ダンマ大師、慧能大鑑禅師、臨済義玄禅師と的々相承し、
日本において臨済宗・黄檗宗十五派と華開いております。

このため、ブダガヤ大塔への敬慕の念はことに篤く、私どもははるか昔よりはるばる貴国へと、
仏蹟巡拝の旅に上っているのであります。                      

しかるにすでに御承知のとおり、歴史的な事情によるとは言え、未だにそのブッダガヤ、ラージギル等の
仏蹟地の管理運営維持がインド仏教徒自身の手に委ねられていなくて、近年、巡拝から帰国した人々から耳にいたしますことは、
不適切な管理・警備のされ方をしている、という事実を知って、
日本仏教徒のみならず世界の仏教徒は複雑な寂しい思いをしております。

 今日、貴国においても、一九五六年十月十四日、マハラシュトラ州、ナグプールにおいて、
独立インド憲政の父であります、アンベードカル博士によって導かれて、
仏教が復活したことはすでに皆様よくご承知のとおりであります。

その後継者として日本人僧、インド国籍名アーリヤナーガルジュナ佐々井秀嶺師が
一億人とも言われるインド仏教徒を指導して来られ、
現在は中央政府の要職であるマイノリティー委員会の仏教徒代表委員に就任しておられます。

 その佐々井秀嶺師が十数年前より、身命を投げ打って、大塔の管理権の返還を訴え続けておられる様子は、
日本のマスコミでも大きく報道され、仏教界、一般国民に大きな感動を呼んでおります。

 日本国民の大多数は仏教徒であります。私どもが願うところは、
ユネスコによって正式に世界遺産に認定されようとしているブダガヤの地が、
世界宗教の一つである仏教の根本聖地として名実共に、仏教徒の手によって管理運営され、その尊厳と静寂が護られ、
巡礼者にとって真の心の安らぎを得られる清浄地となることであります。

この聖地の問題に一層のご理解とご支援をいただきまして、
どうか一日も早くブダガヤ大塔、大菩提寺がすべてインド仏教徒の手に委ねられ、
安心して仏蹟巡拝ができるようになりますように。

これこそ日本・印度両国の固い友情、真の友好の証しといえるでしょう。

この実現のために、閣下の御尽力を是非ともお願いいたしたく、
日本禅宗、臨黄十五派の連名をもってこの一文を提出するものであります。

平成十七年五月二十三日、

 臨済宗・黄檗宗連合各派合議所

       臨済宗妙心寺派宗務総長

       黄檗宗宗務総長

       臨済宗南禅寺派宗務総長

       臨済宗建長寺派宗務総長

臨済宗東福寺派宗務総長

臨済宗円覚寺派宗務総長

臨済宗大徳寺派宗務総長

臨済宗方広寺派宗務総長

臨済宗永源寺派宗務総長

臨済宗天龍寺派宗務総長

臨済宗相国寺派宗務総長

臨済宗建仁寺派宗務総長

臨済宗向嶽寺派宗務総長

臨済宗佛通寺派宗務総長

臨済宗国泰寺派宗務総長

 

アブドゥル・カラム大統領閣下

マンモハン・シン首相閣下

ブッタ・シン、ビハール州総督閣下

 

(本文と英訳文を、それぞれの名前で三通作成し、管長様より手渡していただきます)