釈尊 「女よ、心して聞くがよい。あやまちを犯したときは、自ら悔い、 直ちに改めなさい。そうでなければ水が海に入り、自然に広く深くなるように、罪はその身につきまとうであろう。改めれば、罪は消え、やがては道を得るに至るであろう」
「なんだい、なんだい、澄ました顔をして、聞いた風なことをお言いじゃないか。この後におよんでまで、シラをきるつもりかい。お嬢様、泣いてる場合じゃないですよ。まったくこの鉄面皮な男、ゴータマを、この座からひきずり降ろすまでは、わたしたちは引き下がりませんからね」
バラモンA 「おい、おい、ちょっとやりすぎじゃないのかい」
バラモンB 「なんだか妙な具合になってきやがったぜ」
チンチャー 「ああ〜、わたしはなんでこんな不誠実な人に心を許してしまったのでしょう。あなたはあのとき、私の
耳元でおっしゃいました。ここにはおまえと私しかいないと。わたし、なんのことかわかりませんでした。
まさか、聖者といわれるあなたがあんなことをなさるとは・・・。でもこうしてあなたの子を身ごもった以上、私はあなたの妻として、どこまでも付いていきますわ。どうか、おそばにおいて下さい」
アーナンダ 「よくもよくも、そんなでたらめが言えたものだ。おまえが一人で世尊のおそばに参ることなど、あるはずがないではないか。世尊よ、なぜ黙っておいでなのです?」
釈尊 「まあよい。アーナンダ、ひかえていなさい。女よ、再び言おう。真実は汝自らが知るとおりである。あやまちを犯したときは自ら悔い、直ちに改めるがよい。そうでなければ、おまえがおまえ自身を禍いすること、あたかも響きの声に応じ、影の形に添うが如くである。慎んで悪をなすことなかれ」
バラモンA 「おい、おい、もうこれぐらいにしようよ。なんだか怖くなってきたよ」
バラモンB 「おれ、もういやだよ」
「どうしたっていうんだい。臆病者、もう一押しだってえのに。だめじゃないか。皆の様子をごらんよ。こっちに形勢が傾いてきているのがわからないのかい。しっかりおしよ」
チンチャー 「ああ〜・・・・(泣き崩れる)愛するお方に見捨てられては、もう生きていけない。とてもこの子を産む勇気はないわ。いっそ、井戸に身を投げて死んでしまいたい・・・・・ああ〜・・・・(さらに泣き崩れる)」
ーーー聴衆、その様子に動揺する
釈尊 「おろかな人たちだ。悪を悪とも知らず、罪を罪とも思わず、薪が燃えて、自らを焼き滅ぼすように、
人を欺こうとするものは、自らを欺き滅ぼすのだ。・・・・・・・是非もない。大地の神よ、出でて真実を明かしたまえ」
ーーー轟音、照明、音楽とともに
道化が太鼓、鐃鉢を鳴らすと、ネズミが数匹出現(子供たち)、チューチュー鳴きながら、チンチャー、姉に近づき、逃げるチンチャーを追いかけ、帯をかじる。大きな鍋、(お盆)がけたたましい音を立てて転げ落ちる。人々総立ちになる。チンチャーたち、花道へ逃げ去る。人々、大いにあざけり笑う。にぎやかなうちに緞帳降りる。
ネズミが現れ、チンチャーの帯を噛み切るとお盆が転げ落ちた
(NA) その後、マガダ国の人々はチンチャーの姿を二度と見ることはありませんでした。大地が裂けて、
飲み込まれてしまったのであろうと、人々は話し合いました。
それでは皆様、合掌をお願いいたします。これらの尊いみ教えを説き明かして下さったお釈迦様の
御名をお称えいたしましょう。
南無本師釈迦牟尼佛
南無本師釈迦牟尼佛
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